鉄筋工事

鉄筋の性質と構造と加工図

性質と構造と加工図

鉄筋の性質

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 鉄筋には、性質が有ります。 その性質を理解して扱う事により作業がより円滑になります。

  1. 鉄筋は「はねる」性質が有り、弾性体です。
    片側の端部を持ち上下左右に揺らすと、鉄筋は「はね」てその性質を利用して鉄筋を移動すると、 作業が早くなります。
  2. 鉄筋は「ころがる」。鉄筋は、丸いのでごく近距離を平行移動したい場合は、転がして移動すると作業が早くなり体が楽です。
    *「はねる」方法と「ころがる」方法を使い分けると、良好、かつ、迅速な作業が可能となります。
  3. 鉄筋は「からまる」。鉄筋は、棒線状で弾性体なので、他の鉄筋と絡まる性質が有ります。
    特に、違う種類の鉄筋(形状・口径・切寸)は、材料同士が絡まると判別に手間が増えるので重ねない方がいいのです。

 鉄筋は、なるべく平行に仮置きして、鉄筋をかついで移動する場合、 鉄筋をかついでそのまま水平移動ができるような配置(仮置き位置)にすると、 現場の作業の流れが良くなります。

 これらの性質を利用して、材料の移動や作業員の体の動きに無駄の無い方法を選択して、 少ない体力消費率で作業を進行する事が理想です。

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鉄筋コンクリート構造の種類

 建設工事は、大まかに土木建築に分けられます。 (擁壁に関しては、土木と建築の判別があいまいな場合が有ります。)

建築(鉄筋)

 建築の鉄筋コンクリート構造の種類は、大きく分けて三種類です。

  1. SRC構造(鉄筋・鉄骨構造)
    主に高層建築で採用されます。
  2. RC構造(ラーメン構造)
    柱と梁によって抵抗するもので、一番多く採用されています。
  3. 壁式構造
    壁・梁・スラブを一体化した構造で、主に四階建てくらいまでの建物に採用されます。

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鉄筋コンクリート構造の基礎の構造の分類と形式の種類

基礎の構造の分類

 鉄筋コンクリート構造の基礎の種類は、 まず、直接基礎杭基礎の二種類の構造の分類に分けられます。

  1. 直接基礎
  2. 杭基礎

基礎の形式の種類

 直接基礎か杭基礎の構造に分かれて、 さらに独立基礎・布基礎・べた基礎等の形式の種類に分けられます。

独立基礎(杭基礎)

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 基礎の構造の分類や形式の種類により、 地中梁の圧接位置が違うので十分注意が必要です。

布基礎

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完全にベースが重なるタイプの布ベース

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他のベースに飲み込むタイプの布ベース

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配力筋同士を通すタイプの布ベース

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 基礎の構造の分類や形式の種類により、 地中梁の圧接位置が違うので十分注意が必要です。

べた基礎(耐圧版=耐圧ベース)

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 基礎の構造の分類や形式の種類により、 地中梁の圧接位置が違うので十分注意が必要です。

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鉄筋コンクリート構造の種類(建築)

 鉄筋コンクリート構造の種類は、大きく分けて、 ラーメン(RC)構造鉄骨鉄筋(SRC)構造壁構造の三種類の構造の分類に分けられます。

  1. ラーメン(RC)構造(*一番多く採用されている構造)
  2. 鉄骨鉄筋(SRC)構造(*高層建物に多い)
  3. 壁構造(*主に4階建までの建物に多い)

ラーメン(RC)構造

 最も多く採用されている一般的な鉄筋構造です。 鉄筋工であるならば、この鉄筋構造は完全にマスターしなければなりません。

 当サイトでは、この「ラーメン構造」を基本に解説しています。

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鉄骨鉄筋(SRC)構造

 鉄筋の配筋に内部に鉄骨が組み立てられて、頑丈な構造となるので、 特に高層ビルなどに採用される鉄筋構造です。  一般的には、鉄筋の基礎の配筋後から鉄骨の組み立てを優先して、作業を進行します。  鉄骨の柱にあらかじめ「スパイラルhoop」が巻かれています。

 鉄骨と鉄筋の絡みに細心の注意が必要です。

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壁構造

 基礎は、「布基礎」・「耐圧基礎」を採用し、 配筋手順は、ベース>地中梁>壁縦コーナー筋>壁差筋>土間差筋>、  土間配筋>、 1F壁配筋>2F梁配筋>2Fスラブ配筋>1F階段配筋>以降、繰り返し作業となります。
 主に4階建までの建物によく採用される鉄筋構造です。 「ラーメン構造」のような柱が無く、「壁=柱」とみなし「壁+梁+スラブ」>一体化構造のために、 鉄筋が細い材料が採用されるわりに地震に強いと言われています。
「ラーメン構造」の壁の配筋は>「横筋=内・縦筋=外」ですが、 「壁構造」の壁を配筋する場合は、「壁=柱」とみなすため、「横筋=外・縦筋=内」に配筋します。

 また、ほとんどの現場では梁の主筋のアンカを水平に配筋(=上下共)して、(実際には斜め45度に傾けます。) 梁の主筋のアンカ自体を「L2=40d~L1=45d以上」の長さで加工(=上下共)します。(*現場の指示に従います。)

壁構造のコーナー筋、及び、開口補強筋

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壁構造の横筋のコーナーのオサマリ

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 「壁構造」は、壁とスラブの絡む部分に全て梁を通すタイプと、 開口部の上下のみに梁を設け独立壁に飲み込みを取り、(腹筋・下筋) 梁の上筋をスラブの上筋の「受け筋」として通すタイプ二種類が有ります。  基本的に鉄筋量が少ないわりに配筋に手間が掛かるけれども、 「壁+梁+スラブ」が一体化されるので効率のいい丈夫な建物となります。

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 「壁構造」は「ラーメン構造」よりも手間が掛かるために、 一般的には「ラーメン構造」よりも8,000円~10,000円以上の高い単価となります。  物件により、手間のかかり方が違います。 個人の邸宅の場合、単価の値上げの検討・交渉が必要となります。 (*職人泣かせの鉄筋構造です。)

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鉄筋の加工図

 鉄筋を見積もりして、工場に入荷される時は、その見積もりした 鉄筋の太さ(D10、D13、D16~)と長さ(3500~500単位で)と本数が定尺材料で入荷されます。

 入荷されたままの定尺材料をそのままの状態で使用する場合、 その材料を「生材」といい、「生材」を切断して使用する場合を「切りっぱなし」と言います。

 鉄筋の加工図の名称は、いろいろ有りますが主によく使用されるものは、 下の画像の「形状」の呼び名が多いです。 「形状」の呼び名は、地方や組織により違う場合が有ります。

 スタラップ(=st.)に関しては、原則として下の画像の右上のHOOPと同じ形状のものを使用しなければなりません。 違う形状にする場合は、打ち合わせの時に設計事務所の許可が必要です。

 一般的には、切断寸法が「7500ミリ」を超える長いスパンの場合は、継手を設けて材料を継ぎ足します。

鉄筋の伸び

 加工工場に入荷された定尺材料(=生材)は、3500ミリから500ミリ単位で規定されています。 それぞれの定尺材料(=生材)は、実際には規定寸法よりも1d~2d程度長い寸法で入荷されます。

 また、90度に折り曲げると材料の全長(=切断寸法)が1か所あたり2d長くなります。 ( 加工すると材料が伸びます。D10~20ミリ>D25~50ミリ)

配筋図(作業手順書・作業要領書)

 「配筋図」に関しては、実務的に経験と努力が必要です。

 まず、自分の上司(親方)がどのような配筋図を作成しているか? 応援に行った先の配筋図はどのようなものか?を観察すると、それぞれ作成方法が違うはずです。

 現在、「加工帳」での参考だけで配筋している業者はいないはずです。(=「おっつけ作業」)

 配筋図は、業者によっては「施工図」の上に直接「配筋リスト」や「配筋材料」を記載したり、 部分的に詳しく「配筋リスト」や「配筋材料」を別紙に記載したり、 さらには改めて「施工図」とは別に専門の「鉄筋施工図」を作成したり、業者によりそれぞれ作成方法が違うはずです。

 色々な「配筋図」を参考にして、その現場に合った「配筋図」を作成する事が望ましいでしょう。 どんな現場であっても「配筋図」を作成する前には、その現場の担当責任者(現場監督)と打ち合わせをする必要が有ります。

 「配筋図」は、どのような方法を採用したとしても「配筋リスト」や「配筋材料」を記載する事自体は、 最終的には同じです。「必要材料」・「使用材料の構成」が誰にでも簡単に解る事が重要です。

 通常は、「配筋図」を作成した後に、「加工帳」を作成します。

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覚えておきたい数式

 加工寸法を計算する時、最低下記の数式は覚えておくと、変形した寸法を計算する場合戸惑わずに済みます。

 型枠大工の場合、図形の面積を求める事が重要ですが、鉄筋の場合は、線(=鉄筋)の長さを求める事が重要です。

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鉄筋の施工図の種類

 配筋する時には、現場に搬入した(加工済みの)材料を、 配筋する位置に速やかに運ばなければなりません。
 その際、なるべく、”迷う事なく!、直ぐに!”、どの材料がどこに使用する物か解るようにしておく必要があります。  
 そのためには、色々な材料の記載方法が有ります。
 材料の記載方法が優れていると、各作業員が直ぐに作業が出来るので、 現場責任者自身が現場において負担が無くなり、次の段取りをスムーズに進行する事ができます。 主な種類としては、下記の4種類となるかと思います。

加工帳に直接記入する方法

 この方法は、加工帳に材料を直接記載する事により、事務作業が迅速と成ります。 事務作業が抑えられるのでミスも減少しますが、記載自体間違えると当然直接ミスとなります。
 あらかじめ施工図(躯体図)に記号を記載しておく事で、場所を直ぐに確認できます。
 昔ながらの伝統的な方法で、数100キロ程度の構造物ならこの方法で十分です。

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施工部分の部分的詳細を記載する方法

 この方法は、施工部分の部分的詳細を各施工箇所を1枚の用紙に記載する事により、 迷う事無く材料を移動出来ます。

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 あらかじめ施工図(躯体図)に記号化しておくと効果倍増で、 コピーした物を施工場所にに貼り付けると誰でも必要材料と施工位置の関係が解ります。

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施工図(躯体図)に直接上書きする方法・鉄筋施工図による方法

 施工図(躯体図)に直接上書きする方法と「鉄筋施工図」による方法は、 1枚作成すると携帯が楽で複数の作業の確認と打ち合わせが可能となり、現場での負担がかなり減少できます。 比較的大規模な現場に向いています。

 施工図(躯体図)に直接上書きする方法は、 鉄筋以外の寸法や記号が書いて有るので、若干汚く感じるのが難点で、 ボールペン等で間違えて記載した時等、修正するとより見にくくなる事が有り、 記載した人の数字の癖で数字を間違えて解釈する時がたまに有ります。

 「鉄筋施工図」を作成した場合、 鉄筋のみの詳しい「詳細・寸法・リスト」や「材料」を記載するために、1枚作成すると現場での確認がスムーズになります。
 ただ、「鉄筋施工図」を作成するのに製図の作業が必要で大変手間が掛かります。 (*パソコンでは、「Jw_cad」で作成可能です。)
 特に、最初の基本線を間違えると何もかもお終いです。冷静、かつ、慎重第一です。

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梁の構造(呼び名)

 梁に関しての呼び名は、下の画像に記載している通りで、梁の主筋はそれぞれ上筋・上中ずり筋・下中ずり筋・下筋で、 中央に腹筋それらを囲みスタラップ、腹筋の幅を決める幅止め筋という呼び名で構成されています。

 梁の中央に「中ずり筋」が有る場合、結束線でぶら下げるだけでなくピッチ@1000で「幅止め筋」で固定します。

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鉄筋の主な必要な長さ・重量

 鉄筋の主な必要な長さは、「鉄筋径(=d)*主な数値」です。

鉄筋の主な必要な長さ

口径・D 1d 4d 6d 8d 10d 15d 20d 25d 30d 35d 40d 45d 50d 100d
D10 10 40 60 80 100 150 200 250 300 350 400 450 500 1000
D13 13 52 78 104 130 195 260 325 390 455 520 585 650 1300
D16 16 64 96 128 160 240 320 400 480 560 640 720 800 1600
D19 19 76 114 128 190 285 380 475 570 665 760 855 950 1900
D22 22 88 114 152 220 330 440 550 660 770 880 990 1100 2200
D25 25 100 150 200 250 375 500 625 750 875 1000 1125 1250 2500
D29 29 116 174 232 290 435 580 725 870 1015 1160 1305 1450 2900

定尺材料の長さ

口径 長さ
D10 3500 4000 4500 5000 5500 6000 6500 7000 7500 8000 8500
D13 3500 4000 4500 5000 5500 6000 6500 7000 7500 8000 8500
D16 3500 4000 4500 5000 5500 6000 6500 7000 7500 8000 8500
D19 3500 4000 4500 5000 5500 6000 6500 7000 7500 8000 8500
D22 3500 4000 4500 5000 5500 6000 6500 7000 7500 8000 8500
D25 3500 4000 4500 5000 5500 6000 6500 7000 7500 8000 8500
D29 3500 4000 4500 5000 5500 6000 6500 7000 7500 8000 8500
D32 3500 4000 4500 5000 5500 6000 6500 7000 7500 8000 8500
D35 3500 4000 4500 5000 5500 6000 6500 7000 7500 8000 8500
D38 3500 4000 4500 5000 5500 6000 6500 7000 7500 8000 8500
D41 3500 4000 4500 5000 5500 6000 6500 7000 7500 8000 8500

鉄筋の重量

口径 重量(kg/m)
D10 0.56
D13 0.995
D16 1.56
D19 2.25
D22 3.04
D25 3.98
D29 5.04
D32 6.23
D35 7.51
D38 8.95
D41 10.5

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