品質管理

鉄筋工事の工程と拾い出しと加工帳

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品質管理

 鉄筋工事をする上での品質管理とは、「設計図書に示された品質を十分満足するような配筋を、 問題点や改善方法を見出しながら、最も経済的に作るために、 その作業のすべての段階に統計的手法などを用いてゆくことです。

品質管理

 品質管理でいう「品質」は、絶対的なベスト(最上)という意味ではなく、 ある条件、ある用途におけるときのベストであると考えるべきです。

 施工品質のバラツキを最も経済的にしかも目標にかなうように管理していくことが「品質管理」です。

鉄筋工事の品質管理

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鉄筋の「仕様書」について

 鉄筋の「仕様書」は、各地域の地震対策と設計士(構造屋)がそれぞれ皆違うので、仕様も微妙に変わります。  極論を言えば現場により設計士(構造屋)変わるので、すべての現場の仕様は ”すべて違う”と考えた方が無難です。
 一般的には、「省庁」・「都道府県」・「設計士(構造屋)独自」の3種類に分別され、 微妙に部分的に「指示」が変わる(違う)という感じです。
 以外にこのポイント(=仕様書に関して)は知られていないというのが真実で、 「鉄筋工事」の一部の作業員等、休憩時に「カッコイイ能書き」を発言する方がいますが、 その世間話の「セリフ」の最初から”思い込みによる間違え”を話ている方が結構多いというのが事実です。
 それから、肝心な事は不動産物件等の契約書等と同じように、仕様書の「特記事項」を見逃す場合が多々有ります。 ここのポイントを見逃す場合が多いという事が事実です。
 ただ、一般常識(=暗黙の掟=当然のマニュアル)は、全国的には、そう違いは無いハズです。 一般的には、この一般常識(=暗黙の掟=当然のマニュアル)を抑えておいた上で、 現場が変わった時点で頭を切り替えて、現在作業しているその現場の「仕様書」を良く確認して、 作業に取り掛かる必要が有ります。
 ”前の現場では、これで良かった!何も言われなかった!”・”普通はこのように組み立てる事が常識だ!”と言っても、 その現場の「仕様書」に記載されている通りに組み立てないと「検査」は絶対に通りません。 その現場の「仕様書」に記載されている通りの配筋方法で作業しましょう。
 実は、このポイントも「鉄筋工事」では、本当に、見逃しやすい、難しいところなのです。
 このページでは、下記に抑えておきたい一般常識(=暗黙の掟=当然のマニュアル) を記載しています。普通の民間の現場で有れば、「都道府県」の「仕様書」を基本に、 覚えておく必要が有ります。

べた基礎(耐圧盤)の場合

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梁の上増し筋の方法

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地中梁端部の詳細

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異形鉄筋の記号

d. 異形棒材の呼び名に用いた数値 4d.6d.8d.~
D. 部材の成(口径) D10.D13.D16.D19.D22.D25.~
L. 直径(内法寸法) -
@ 間隔(ピッチ) mm
r. 半径 (* r = L / 2)
st. あばら筋 スタラップ・梁バンド
HOOP 帯筋 フープ・柱バンド
S.HOOP 補強帯筋 サブフープ・ナカゴ

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鉄筋の折り曲げの形状

 鉄筋の加工は、原則としてアセチレンガスなどの熱間加工は禁止されています。

 *「d」>鉄筋の太さ(=1d)が基本となり、「鉄筋の太さ(=1d)*規定数値」=「必要寸法」となります。

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 鉄筋の折り曲げ形状の「内のり寸法」は、下の画像の通りです。

 土木では、鉄筋の「内のり寸法」(=R)を大きく指定される場合が有ります。

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鉄筋の定着及び継手の長さ

 一般的な鉄筋の定着(=のみこみ)及び重ね継手(=ジョイント)の長さは、だいたい共通していて、 下記の通りです。

 鉄筋の部分的に必要な長さを、「L1」・「L2」・「L3」と表示され、 これらは配筋する鉄筋の太さ(=1d)が基本となり、「鉄筋の太さ(=1d)*規定数値」=「必要寸法」(「L1」・「L2」・「L3」)となります。

鉄筋の種類 コンクリートの
設計基準強度
定着の長さ
・一般(L2)
定着の長さ
・小梁下筋(L3)
定着の長さ
・スラブ下筋(L3)
特別の定着
・継手の長さ(L1)
SD295A・SD295B・SD345 210・225・240 「35d」または、
「25d+フック(付き)」
「25d」または、
「15d+フック(付き)」
「10d」
かつ「150」以上
「40d」または
「30d+フック(付き)」
SD295A・SD295B・SD345 150・180 「40d」または
「30d+フック(付き)」
「25d」または、
「15d+フック(付き)」
「10d」
かつ「150」以上
「45d」または
「35d+フック(付き)」

 たまに、大きな勘違い・誤解をする人がいますが、 定着の長さ・スラブ(L3)の”「10d」かつ「150」以上”と記載されている内容は、 「10d」と「150」をたす事ではなく、 「10d」という長さと「150」という長さのどちらも満たしているという事です。 たとえば、10ミリの鉄筋なら”「10d」=100ミリ”の「100ミリ」と”「150」=150ミリ”の「150ミリ」の、 どちらも超えている・満たしている数値という事で、 この場合は最低「150ミリ」必要という事です。 「150ミリ」以上あれば問題無しとういう意味です。

 壁構造のスラブの下筋は、ほとんどの場合、 対面する梁幅が狭いので100ミリ程度のアンカを付けたほうが無難です。

 どの項目も必要以上長くする必要は有りませんが、 ギリギリの長さでは配筋がずれて定着(=のみこみ)や重ね継手(=ジョイント)が足りなくなる場合が有るので、 細物では50ミリ程度・太物では100ミリ程度長く計算して、 在庫の生材の寸法を参考にして、きりのいい少し長めの寸法で加工する必要が有ります。

 寸法が足りない場合は、補強して是正を指示される事が多く、 最悪の場合は材料の交換の指示が出た場合、組立やり直しとなります。

 *上記の仕様はあくまで一般的な仕様の一例です。( だいたい共通しているはずです。) 現場ごとに仕様書の記載が違う場合があります。 また、現場により仕様書の他にマニュアルが有る場合は両方を照らし合わせて、 両方の規定値をクリアする必要が有ります。 その現場の仕様書に従った加工方法で施工してください。

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継手

 基本的には、なるべく継手を少なく材料を割り当てて計算して加工する事が望ましいのですが、 どうしてもスパンの長い場合は、継手を設けて補うしかありません。

 継手を設ける場合には、一定の規定があります。

  1. 末端のフックは、定着及び重ね継手の長さに含まない。
  2. 継手位置は、応力の小さい位置に設ける事を原則とする。
  3. 直径の異なる重ね継手の長さは、細い方の鉄筋の継手の長さとする。
  4. D29以上の異形鉄筋は、原則として重ね継手としてはならない。
  5. 鉄筋の径の差が7ミリを超える場合、圧接としてはならない。
  6. 重ね継手の両端を(最低2か所)結束して固定する。

 下の画像のように、隣り合う継手位置は、 圧接継手では最低「400」ミリずらします。 ずらす距離が長い程好ましいとされています。 一般的にはキリのいい数値で余裕をみて「500」程度ずらす事が多いようですが、実際の施工では「抜き取り」をする事が常識なので、 「1000ミリ(=1M)」はずらした方がいいでしょう。 役所の検査では、”「抜き取り」したので仕方がない!”という、言い訳は通りません。 役所の検査では、イモ配筋が厳禁です。 重ね継手では、1.5L1以上ずらし、継手範囲に余裕が無い場合には0.5L1ずらさなければなりません。

 「防衛省」の現場の場合は、スラブ筋も壁筋も重ね継手はすべてずらさなければなりません。 是正指示が出た場合、組み立てをやり直しとなります。 コンクリート打設後に、写真に重ね継手がずれていない部分が写っていた場合は、 コンクリートを解体後に配筋の組み立てをやり直して是正前と是正後の写真を撮影し、 再度コンクリートの打設となります。 尚、その際の是正した作業の手間(=費用・人工)は当然出ません。

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かぶり厚さ

 コンクリートのひびわれや鉄筋のサビ防止等のため、鉄筋とコンクリート面(型枠)の距離は、 一定の間隔を保持しなければなりません。

 組み立て鉄筋の外端からコンクリート面(型枠)の間隔を「かぶり」といいます。

 *土木の場合は、鉄筋の芯からコンクリート面(型枠)の間隔が決められていて、 「鉄筋の太さ(=D)/2(=半分)」引いた値が鉄筋の外面からの「かぶり」となります。 この場合、各現場のすべての部分の「かぶり」は、その現場の図面にて指定されます。 ( *建築は、例外も有りますが、一定の「かぶり」が各部分ほぼ共通の場合が多く、 土木は、現場ごとにすべての各部分の鉄筋の芯からの「間隔」を指定されます。)

 *土木といえば、”土木の「拾い出し」の場合、材料のリストをそのまま写せばいい!”と誤解して、 そのままの寸法で加工してしまう人がいますが、まったくの間違いで各方向の鉄筋の「かぶり」が、 上記のように鉄筋の芯からコンクリート面(型枠)の間隔が図面通りに合うように、 すべての鉄筋を「拾い出し」加工します。 図面の材料のリストの材料は、「見積もり」段階の寸法です。

 *土木では、鉄筋の芯からコンクリート面(型枠)の間隔を、 「鉄筋の太さ(=D)/2(=半分)」引いた値の「かぶり」に変換して、 すべての鉄筋を「拾い出し」加工します。

 「かぶり」は、各スペーサーで確保します。 「スペーサー」の間隔は、特に指定されていない場合、縦・横共1M以内となります。

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 「かぶり」は、各部分により一定の数値が規定されています。 だいたい、下記に記載している数値が標準的な「建築」の「かぶり」の数値です。

部位 かぶり厚さ
土に接しない部分 屋根スラブ・床スラブ・非耐力壁 屋内 30
土に接しない部分 屋根スラブ・床スラブ・非耐力壁 屋外 40
土に接しない部分 柱・梁・耐力壁 屋内 40
土に接しない部分 柱・梁・耐力壁 屋外 50
土に接する部分 柱・梁・床スラブ・耐力壁 50
土に接する部分 基礎・擁壁 70

 *上記の仕様はあくまで一般的な仕様の一例です。( だいたい共通しているはずです。) 現場ごとに仕様書の記載が違う場合があります。 また、現場により仕様書の他にマニュアルが有る場合は両方を照らし合わせて、 両方の規定値をクリアする必要が有ります。 その現場の仕様書に従った加工方法で施工してください。

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 以外に見落とされがちなのですが、ベランダの上筋とかその他の「鉄筋の先」の「かぶり」の確保も重要です。 「かぶり」のラインからはみ出さないように組立てましょう。 検査ではよく注目されるポイントです。

 「結束線のはね先」も原則として、組み立てた鉄筋の内側(型枠の反対方向)に折り曲げなければなりません。 また、組み立て後の構造体内の捨コンの表面や一般階の梁・スラブの型枠上や壁の底等 に結束線・ゴミ等が落ちていないように清掃しましょう。 現場によっては、結束線が一本だけ落ちている場合でも、コンクリート打設中止という現場が有ります。 日頃から担当持ち場の配筋結束後の清掃を心がけましょう。

 「防衛省」の場合、「かぶり」を一か所ずつミリ単位で測定して、 足りない場合は是正を指示される場合が有ります。

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鉄筋の「あき」

 隣り合う鉄筋と鉄筋の間隔を「あき」といいます。

 鉄筋の「あき」には、一定(最小限)の決まりがあります。

 上記の三項目の条件をクリアしていなければなりません。

 柱の中のアンカが込み合う場所など、アンカとアンカの間隔も「あき」が必要です。 壁構造などは、「かぶり」を気にするあまりに、壁の横筋の幅やスタラップの幅を狭くして、 「かぶり」に余裕を持たせると今度は込み合う配筋部分のアンカなどの「あき」の確保を指摘される事が有ります。

 現場監督や設計事務所の配筋検査の担当員が、「かぶり」重視派か「あき」重視派か傾向を探り、 よく打ち合わせの後に壁の横筋の幅やスタラップの幅を決めたほうがいいと思います。

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鉄筋のフック

 異形鉄筋でも末端にフックを付けなければならない部分が有ります。

  1. 丸鋼、あばら筋、帯筋
  2. 煙突の鉄筋
  3. 柱・梁の出隅部分の鉄筋の重ね継手の末端(下の画像参照)
  4. 単純梁の下端筋
  5. その他、配筋基準に記載されている部分

 丸鋼の鉄筋と違って異形鉄筋にはフックは必要無いと思われがちですが、 ほとんどの仕様書には上記の部分にフックが必要と記載されているはずです。

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 各現場、コンクリート打設前に設計事務所または役所による配筋検査が有ります。 ( 柱・壁の配筋後にも配筋検査をする場合が有ります。) その時に、定着・継手の状態・かぶり・あき・ピッチの乱れ等、 是正部分があるかどうか一通りチェックされます。

 是正部分を指示された場合は、すべて是正して是正前と是正後の写真を撮影し、 コンクリート打設の許可が下ります。

 尚、是正にかかった手間(=費用・人工)は、もちろん出ません。

 *上記の仕様はあくまで一般的な仕様の一例です。( だいたい共通しているはずです。) 現場ごとに仕様書の記載が違う場合があります。 また、現場により仕様書の他にマニュアルが有る場合は両方を照らし合わせて、 両方の規定値をクリアする必要が有ります。 その現場の仕様書に従った加工方法で施工してください。

 品質管理の基本は、最初の「打ち合わせ」と加工帳の「拾い出し作業」です。 「打ち合わせ」時には、「打ち合わせ」事項を書面にして現場担当者(現場監督)からサインをもらった方が無難です。 組立て時にいかに綺麗に組み立てても、加工した材料自体が誤算しては、 品質が低下し是正して材料の交換のため、加工をやり直しさらに組立をやり直したのでは、 採算に響きます。

 「拾い出し作業」は、実績と熟知した経験が必要で最重要項目です。

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